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新潮社の本が刊行されるまで―新人作家さんの場合―日記公開!三日月拓『きのうの家族』10/22発売!
本をつくる。本が世に出る。それは、著者にとっても出版社、担当編集者にとっても大きなよろこびです。けれど、道のりは決して平たんではありません。まして、著者にとって初めての本となったらなおさらです。ここでは、2007年4月に『シーズンザンダースプリン♪』(電子書籍で発売中)で「女による女のためのR-18文学賞」優秀賞を受賞した三日月拓(みかづきひらく)さん(34)の初の単行本『きのうの家族』が刊行されるまでの行程を全公開!三日月拓さんの担当編集者Nによる「本づくりのプロセス」解説とともに、著者の日記を順次公開します。

Ⅴ.商品としての本「装幀」まわりで魅力UP

担当編集者Nによる「本づくりのプロセス」解説

イラストレーターさんから送られてきたラフ(下書き)を束見本(つかみほん、下記日記参照)に巻いてみる。
わりと最近まで、本の雰囲気を「つかむ」ための本=ツカミ本だと思ってました。 本の中身=文章を整えると同時に、外側も作っていかなくてはいけません。新潮社の場合、すべての本に装幀の担当者がつきます。この小説にはどんな"衣装"が合うのか? イラスト? もしくは写真? 発売前の2ヶ月ほど装幀の担当者と意見を交換しつつ、本の方向性をすりあわせていきます。
 ここでたいがい問題になるのが原価計算。頁数や部数、読者層を考えると、「だいたいこれくらいで売りたいなー」という定価がおぼろげに見えてきます。定価が決まると予算も決まるのですが、なぜかたいていちょっと足りない。何を削って何を残すのかで、モノとしての本をどう作るかが決まってきます。
 発注していたイラストや写真が届き、本の形にデザインされ、中扉も表紙も帯も出来上がり、最後に装幀室の見本からはなぎれ(ハードカバーの背の上下に付いている飾り用の布)とスピン(しおりひも)を選ぶと、あー1冊本を作った!という実感がひしひしと湧いてきます。


『シーズンザンダースプリン♪』 三日月拓(みかづきひらく) 新潮社の本が刊行されるまで―新人作家さんの場合―
著者による刊行までの道のり日記
9月27日
装幀の画像をメールで送ってもらう。
ファイルを開いて、
うははは。
と、なんか笑っちゃった。
前述したとおり曽根愛さんの絵はとても好みで、装幀はやっぱりすばらしくて、見たとたん抑えようもなくテンションがあがって爆発的に口からなにか飛び出したよう。

いよいよ単行本。これがわたしの単行本。単行本単行本単行本。
うははは。
と、パソコン画面をなでながらもういちど笑う。
9月29日
新潮社で打ち合わせ。
近くの公園や神社で、本についてコメントしているところやただ歩いているところなど、動画と写真の撮影をしてもらった。
思いついたことをすぐにことばに変えてきちんとしゃべる、ということが苦手で、見られているとわかるととたんに右手右足・左手左足歩きになってしまいがちなわたしが、どこまでやれたのかは不明ですが、わたし以外のみなさまのお力できっとすばらしいものがここにアップされることでしょう。

それから、束見本というのを見せてもらった。
本のできあがり厚さを見るためにつくられる、装幀だけついていて中身は白紙っていうなんとも不思議な本。
こういうのってだれかにしゃべりたくなるけど。編集者さんや知り合いの作家さんたちは当然すでに知っていることなわけで、じゃあそうじゃない人(家族とか)に話しても、たぶん、へぇ、ぐらいしか返しようがないことだろうから、べつにだれにも話さない。胸の中にそっとしまっておく、束見本。
10月15日
見本が届いた。
宅配便のお兄さんが、
「ちょっと重いですけど・・・・・・」って言いながら渡してくれたので、
「そうなんですよ重いんですよ。これね、見本っていって、まもなく出版される本の、そう、見本なんですよ。著者のところに10冊送られてくるんですけどね、あ、そうですわたしがつまりその著者なんですよ。わたしが書いたものがね、このたび新潮社から出版されることになりましてね・・・・・・」
って説明をはじめる想像をしながらドアを閉じた。
部屋へ運び込んで封を開け、1冊手にとって、戻して、立ち上がって、本の束のまわりをぐるぐると歩いてみた。いよいよかというきもちと、けどほかの人が書いた本を眺めているようなきもちもまだある。だけどもういちど手にとってぱらぱらと拾い読みをしてみると、やっぱりどこを拾っても見覚えのある文章で、これはほんとうにわたしが書いたものなんだなとじんわりうれしくなる。写真を撮る。いまのこのきもちも、写真に収めるようにどこかに切り取っておきたいなと思う。あ、この日記があるのかと思い出して、あらためて、単行本の出版とこのようにHPへの掲載という機会まで与えてくださった新潮社のみなさま、なんといってもとくに担当のNさんに、こころより感謝いたします。
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Ⅳ.「ゲラのやりとり」で文章は完成形へ!