TOP > 特別インタビュー「Shincho LIVE!」オープンに寄せて 作家・石田衣良が語る 電子書籍の現在と未来

特別インタビュー「Shincho LIVE!」オープンに寄せて作家・石田衣良が語る 電子書籍の現在と未来 4月26日にオープンした、新潮社のデジタルコンテンツを購入するためのナビゲーションサイト「Shincho LIVE!」。PC、ケータイに続いて近年、スマートフォンが急速に普及し、読書専用端末も相次いでリリースされています。このような状況をふまえて、「Shincho LIVE!」はすべての国内主要端末に対応することを謳ってスタートを切りました。ますます関心を集め、身近になってきた電子書籍。その現在と未来について、作家の石田衣良さんにお話を伺います。 聞き手/新潮社開発部電子書籍事業室・深谷その子

  • Vol.1 電子書籍は紙の本の「ライバル」なのか
  • Vol.2 何でもありのジャングルになったら面白い
  • Vol.3 電子書籍のこれから

Vol.2 何でもありのジャングルになったら面白い

――紙の本と電子書籍は、対立しあうものではない、と。

石田 よく使われる言葉でいうなら、紙の本と電子書籍は「Win-Win」の関係になるだろうと思っています。アメリカでは電子書籍のマーケットが急成長しましたが、彼我の国柄のいろいろな違いを踏まえておく必要があると思います。日本では、本屋さんが読者のすぐそばにあります。アメリカのようにクルマで半日かけて走らないと本屋さんがない、などということはありません。日本ではリアルな書店の流通網がとてもしっかりしているため、誰も彼もが電子書籍に、ということにはならないんじゃないかなと思っています。

――それぞれに大きな魅力があるということですね。

石田 そうです。だから、電子書籍は先端的なガジェットに親和性がある、新し物好きな人たちを中心に広まっていき、そうでない人たちは今までどおり紙の本に親しむ、という形にまずはなるのではないでしょうか。
紙の本と電子書籍が対立するものでないというのは、その通りだと思うんです。たとえばブログをまとめて本にしたものってあるじゃないですか。ブログを愛読していた人たちも、紙の本になったらそれを改めて買ったりしていますよね。なので、電子書籍で読んで「よかった」と思ったら、紙の本も書棚に置いておきたい、装丁された本も持っておきたいということでリアルの書籍も買う。そうしたことも普通に起きてくるのではないかと感じています。情報を得たいという欲望と、モノを所有したいという欲望は別にあるんでしょうね。

――老若男女、つまり性別や世代の差によって、電子書籍の受け入れられ方は違ったりするでしょうか。

石田 僕はね、電子書籍って携帯メールに近いところがあると思うんですよ。携帯メールの普及によって、みんながお互いに凄くパーソナルな言葉をやりとりするようになりましたよね。電子書籍もまた、凄くパーソナルなもの。端末にロックをかけておけば、その中の“書棚”は誰からも見られないのですから、みんながとてもパーソナルな電子書籍を端末に入れたりすることだってあるんじゃないかと思うんです。

――具体的にはどういうことですか。

石田 たとえば、若い女の子がボーイズラブ系の電子書籍をたくさん入れておいたり、世の男性諸氏がエロティシズム溢れる小説を買って入れておいたり。そういう意味で端末の中の“書棚”は、これまでの現実世界の書棚とは別の種類の空間になるかもしれません。ある人はずらりエッチ系、ある人はずらり猟奇系とか。まさに何でもありのジャングルみたいな(笑)。でも、そうなったらそうなったで面白くていいですよね。夢の図書館ならぬ、自分だけの日本ボーイズラブ全集、俺だけの世界エロティシズム全集みたいなものを人知れず持ち歩くのも、とても楽しいと思いますよ。

――今後、読書のあり方や読書体験といったものは変わるのでしょうか。

石田 僕は、そこはあまり変わらないと思うんですよ。今から何千年も昔、物語といえば、みんなが洞窟の中で焚き火を囲み、語りの上手なおじいさんが話してくれるのを座って聴いてワクワクするものだったわけでしょう。その後、文字ができて紙ができて、みんなは遠くの誰かが書いてくれた物語を手にして読んでワクワクするようになった。この「物語を読んで、感じる」という体験は、紙の本も電子書籍も変わりません。物語の力とか小説の奥行きとか情報の深さとかに何かを感じる読書体験というものは、紙の本も電子書籍も変わらないんじゃないかと思います。

――作家にとって、電子書籍の作品を書くにあたっての「書き方」は変わりますか。

石田 小説に関していえば、紙と電子を書き分けるとか、電子書籍向けの形があるとかいうことは、まだないんじゃないですかね。これもアメリカのことですけれど、やはりリアルの書店で売れている作家のものが電子書籍でも同じように売れるのだそうです。ある作家に対するロイヤリティが高い人たち、ある作家が大好きという人たちは、電子書籍も紙の本も一緒に買ってくれるんじゃないでしょうか。だから、面白い、感動が得られるという本であれば、あまりメディアは関係ないように感じています。作家の仕事としては、新しいものを生み出す、面白いものを書くというところに最後は帰っていくわけですから、それさえやっていればメディアはほとんど関係ない。気にしなくていいやって思っているんですけどね。

撮影/スチール・青木登 動画(編集とも)・廣島光秀

※以下、第3回(最終回)「電子書籍のこれから」に続きます。

特別動画1 作家・石田衣良が語る電子書籍の現在と未来(2/3)
特別動画2 Shincho LIVE!オープンに寄せて