書評

2020年4月号掲載

1億円を貯めるのに必要なものとは

井上はじめ『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』

勝間和代

対象書籍名:『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』
対象著者:井上はじめ
対象書籍ISBN:978-4-10-353281-1

 手取り22万円の平凡なサラリーマンが10年間で資産を1億円以上貯められる?

 そんな虫のいい話はないと思うでしょうが、実は時間と勇気と、そして、的確な手法に対する知識さえあれば、できるようになることをこの本の著者である井上はじめさんは教えてくれます。
 しかも、1億円貯めようと思ったきっかけがおもしろい。27歳のときに、通勤途中で入院を2ヶ月も要する死にそうな交通事故にあったときに、保険も会社も、井上さんの苦境をまったく救ってくれないから、自立がもっとも人生にとって重要課題だと決意したわけです。
 多くの人は、資産を貯めるには収入を上げることが必要だと勘違いしていますが、それは違います。井上さんの収入は、おそらくこの書評を読んでいるほとんどの人と同じくらいか、もっと低いくらいでしょう。
 しかし、1億円貯めるのに本当に必要なのは、
 ・的確な節約
 ・的確な投資
 の2つ、そして何よりも重要なのは、その2つを育てきる10年単位の長い時間、でした。井上さんは、卵を買うにもスーパーマーケットを吟味するような方法で給与収入をしっかりと使い切らないように節約し、それを、
 ・投資信託によるドルコスト平均法
 ・中古住宅購入による不動産投資
 に回し続けました。
 もちろん、井上さんが最初からそのような投資方法を知っていたわけではなく、すぐにお金儲けができそうなデイトレやアフィリエイトに手を出し、そこで高い授業料を払った結果として、「お金を簡単に早く儲ける手段はない」と悟り、ドルコスト平均法と中古不動産投資を併用したわけです。
 総資産は1億円以上ありますが、純資産は実はこの本を書いている時点では1億円には満たないのですが、数年経てば簡単に突破するでしょう。むしろすごいのは、このままでいくと、中年期以降は不動産収入と配当収入だけで暮らせるようになることです。
 また、ドルコスト平均法についても、中古不動産投資についても、非常に具体的に手続きの方法や、どうやったら失敗し、どうやったら失敗しづらいかについても本人の体験談と共に明記がされています。
 私も2007年に出版した『お金は銀行に預けるな』から、一貫してこの月々同じ金額で世界株式インデックスの投資信託を買うようなドルコスト平均法を推奨し続けていますが、多くの人は「手続きの煩雑さ」に負けてしまって、概念としてはわかっても、実際に積み立てるまでに壁にあたってやめてしまいます。しかし、この本の中では井上さんはスクリーンショットまで用いながら、実際に投資信託を行えるまで丁寧に読者を導いてくれるのです。
 ちなみに、なぜ、個別会社に投資する株は儲かりにくくても、世界株式インデックスは儲かりやすいかというと、資本主義が続く限り、世界全体のGDPは緩やかに上昇していくので、世界株式も短期では上がり下がりがありますが、中長期では上昇していくからです。このコツさえ掴んでいれば、ドルコスト平均法はまったく怖くありません。
 また、中古不動産投資はドルコスト平均法よりはずっと手間ひまがかかります。良い割安な物件をみつけて、なるべく業者に頼らずに自分でリフォームに関わる時間とスキルが必要です。
 したがって、井上さんもまずはドルコスト平均法の方を強く勧めています。もちろん、節約好きで、まめで、しかもしっかりと勉強をできるのであれば、元手が非常に小さいところから始める中古不動産投資も可能でしょう。
『お金は銀行に預けるな』を出版した頃からドルコスト平均法を始めてくれている人は、そのお金が1.5倍から2倍以上に増えています。しかも、10年で倍になるのなら、20年では4倍、30年では8倍になります。つまり、ドルコスト平均法は早く始めるに越したことはないのです。
 どんなきっかけでも、偶然でも、この本を手にとった人は、1億円の資産を作るチャンスがあります。井上さんの手法を参考に、億万長者への道を目指してください。いまはもう、政府も会社もあなたの老後の面倒を見てくれない時代なのですから。

 (かつま・かずよ 経済評論家)

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