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書評・エッセイ

フランスハドウショウシカヲコクフクシタカシンチョウシンショフランスはどう少子化を克服したか(新潮新書)

?崎順子

814円(税込)

ズレてない? 日本の政策。親に期待しない、3歳から学校に、出産は無痛で。「5つの新発想」を徹底レポート。

少子化に悩む先進国から、子育て大国へ。大転換のカギは、手厚い支援策の根幹を貫く新発想だった。「2週間で男を父親にする」「子供はお腹を痛めて産まなくていい」「保育園に連絡帳は要らない」「3歳からは全員、学校に行く」――。パリ郊外で二児を育てる著者が、現地の実情と生の声を徹底レポート。日本の保育の意外な手厚さ、行き過ぎにも気づかされる、これからの育児と少子化問題を考えるうえで必読の書。

子供の増える国、フランスの発想法

高崎順子『フランスはどう少子化を克服したか』

高崎順子

 ピカピカの遊具、園内で手作りするごはん。保育士は園児をこまめに着替えさせて清潔に保ち、月に一度は季節の行事や遠足を催す。日本の保育園を数件見学した際、その設備と充実した保育内容に感銘を受けた。
 一方、私が2人の子供を預けているパリ郊外の保育園では、給食はセンターでつくったものがほとんど。パリ市内では園庭すらない保育園が多く、外遊びも毎日ではない。着替えは汚れがよっぽど不快な状態(びしょ濡れなど)でなければさせず、Tシャツに粘土や絵の具をつけたまま帰ってくる。園の行事は年に2回、クリスマス会と学年末のお祭りのみで、運動会やお遊戯会はない。まして入園式も卒園式もない。比べてみると、日本はずっと手厚い保育を行っているのだ。日本の保育園は、素晴らしい......!
 それでも私には、そこに自分の子供を通わせることが、とてもハードルの高いことのように思えた。それは日本の保育園で一般的な、「毎日の持ち物表」の存在を知ったから。乳幼児の場合、〈名前を書いた紙オムツ5枚、ビニール袋2枚、口拭きタオルとエプロン各2枚ずつ、着替え1枚ずつ、記入済みの連絡帳......〉。これらを毎日用意して持参し、降園時には使用済みオムツがビニール袋に入れて返却されるという。一方のフランスは、毎日手ぶらで通園し、手ぶらで帰宅する。手厚い保育を行う日本の園は、親に求められるものもまた、フランスよりずっと多いのだ。
 フルタイムで勤務した後、悪臭を放つオムツを持ち帰り、朝晩と子供の世話をして、翌朝また5枚のオムツに記名する(返却時の混同防止のため)。そんな自分の姿を想像して、私には無理だ! と、泣きそうな気持ちになったのを覚えている。そしてそこから考えた。どうして保育園のあり方がこんなに違うのだろう。合計特殊出生率ではフランスは1・98、日本は1・42(2014年、OECDデータ)と、大きな開きがある。手厚い保育を行う日本で、なぜ子供が増えないのか。逆にフランスではなぜ、子供が増え続けるのか。
『フランスはどう少子化を克服したか』は、そんな素朴な疑問に端を発している。そこから現地の保育関係者に会い、子育てをめぐる諸制度を調べていくと、人間的で合理的、かつ現実的な「フランス式」が見えてきた。保育だけではない。父親の育児参加、無痛分娩、就学前教育と、子持ち家庭が経験する様々な局面に、国を挙げた子育て支援策が行き届いている。そしてそこには、日本とは全く異なる発想が採用されていた。保育が日本ほど手厚くなくとも、子供が増えていく発想法が。
 少子化の危機に悩む日本に今必要なのは、まさにその「異なる発想」であることを、本書でご理解いただけると信じている。

 (たかさき・じゅんこ ライター、パリ郊外在住)

高崎順子『フランスはどう少子化を克服したか』978-4-10-610689-7