インタビュー

2015年6月号掲載

『ますます! 東京ひよっ子3人暮らし ~イヤイヤ大魔王降臨! 試練の2さいくん編~』刊行記念 インタビュー

子育てに、ムダなことなんてなかった!

たかはしみき

対象書籍名:『ますます! 東京ひよっ子3人暮らし~イヤイヤ大魔王降臨! 試練の2さいくん編~』
対象著者:たかはしみき
対象書籍ISBN:978-4-10-335692-9

――〇歳から一歳半までを描いた前作『東京ひよっ子3人暮らし』から一年、今作では一歳半から三歳までを三カ月に区切りながら、息子さんである「のっすん君」の成長を追いました。その時々の言葉や仕草、行動など、かなり細かく描き込まれていますが、どのように描かれていったのですか?

 赤ちゃん時代から、日々の息子の言動や、心に留まったことや感じたことなどを、走り書きや簡単なイラストなどでメモしてきました。保育園に預けるようになってからは、保育士さんと毎日やりとりをしている「連絡帳」があって。それらは、漫画にすることを前提に書いていたものではなかったのですが、読み返すと当時の様々なことが思い出されました。注意しても言うことを全く聞きません、とか、イヤイヤがひどくてどうしていいか分からない、とか、悩みや戸惑いが大半で、本にする際は、しんどいエピソードばかりにならないように、全体の構成のバランスには特に注意しました。

 不思議な言い方になるかもしれませんが、「架空の家族のことを描いた」と感じている部分もあるんです。もちろん、すべてのエピソードは現実に基づいていますが、自分の意識として、「育児している私」と「描く私」を別々に捉えていることが、その理由かもしれません。「あー、こんな怒り方しちゃったんだなぁ」とか、反省しながら描いたりもしていて(笑)。客観的に距離をとって描くことを意識しました。

――サブタイトルにもありますが、二歳を過ぎてからの本格的な「イヤイヤ期」との格闘は、読んでいるこちらが、思わずハラハラする場面もありました。

 二歳から三歳にかけてのイヤイヤ爆発の時は、正直、メモも書けないくらい辛かったです。イヤイヤだけでなく、「カーチャンでないとダメ!」な子でもあったので、特に理由もなく「トーチャン、イヤ! あっち行って!」と泣き叫ばれる旦那が可哀想でもあり、一方で、思い描いていた家族像からどんどん離れていく現実に、自分がしんどくもなっていきました。こんなに極端でこの子大丈夫かなと、心配のあまりネットで検索しまくった結果、根拠のない情報にますます不安になったりして……。誰かに相談しても、ネットで調べても、「イヤイヤは次第におさまります」「気がついたらピークを過ぎているもの」といったことだけで、誰も「即効薬」を教えてくれない。一週間が半年くらいに感じられました。でも、ある日突然、本当に突然でしたが、「もしかして、イヤイヤのピークって一週間前だったかもしれない」と、楽になったと感じられた瞬間があったんです。すると、まるでリセットされたかのようにイヤイヤが減り、その分、できることが劇的に増えていって……。みんなが言っていたことはウソじゃなかったんだなと、ようやく納得できました(笑)。

 それに、何より驚かされたのは、イヤイヤが最高潮に達した息子に対して、私がついに叱りながらキレてしまったことがあったのですが(Chapter5 でのエピソード)、その数日後、「あのときポストの前で、のっすん、えんえんしちゃったね。かぁか(お母さん)、すごくおこったね。でもおうちかえって、なかなおりしたね」と、息子が突然言い出したことです。あんなに小さな子なのに、自分の中で消化して、反省していたんですね。イヤイヤ期の渦中にいる時は、無我夢中でなかなか冷静になれないものですが、「こうしないで欲しい」「こう育って欲しい」と伝え続けることはムダではなくて、引いた目で見れば、子どもは日々、ちゃんと成長しているから大丈夫なんだと、今は思えるようになりました。

 それに、イヤイヤ期がないお子さんを持つ親の場合――私の義理の姉がそうだったのですが、「育てやすくて羨ましい」「思春期の反抗期がよりひどくなっちゃうらしいよ」などといった、何気ない一言に傷ついたことがあったそうです。本当に、みんなそれぞれ悩みを抱えているんだな、と改めて感じます。

――保育園の帰り道、言葉を覚えたのっすんと初めて「会話」をした場面では、思わずホロリとしました。

 私もあの瞬間は忘れられないです。「ただただお世話をする人」から、「お喋りができる人」にのっすんが成長したことは、自宅でひとり仕事をしている私にとって、大きな味方を得たような気持ちにもなりました。「夫婦と赤ちゃん」から、本当の意味での「家族」になったんだ、とも感じられて、感動もして。だから、私が経験したことがひとつの例として、こんなやり方もあるんだと何かを乗り越えるヒントになったら嬉しいですし、うちはここまでイヤイヤがひどくなくて良かったとほっとしたり、励ましや癒しになってもらえたら……というのが強く願っていることです。大丈夫、なんとかなるよね、と。


 (たかはし・みき イラストレーター)

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