書評

2013年12月号掲載

玉ねぎを泣かせる男

――チャック・ノリス『チャック全開! チャック・ノリス「最強」伝説』

チャック・ノリス特別取材班

対象書籍名:『チャック全開! チャック・ノリス「最強」伝説』
対象著者:チャック・ノリス著/柳亨英訳
対象書籍ISBN:978-4-10-506551-5

「チャック・ノリスは玉ねぎを泣かせる」
「グーグルでさえもチャック・ノリスを見つけることができない」
「チャック・ノリスが卵を欲しい時、彼はニワトリをパカッと開く」
「キリンはチャック・ノリスが馬にアッパーを放ったことによって生まれた」
 チャック・ノリス・ファクトをご存知だろうか?
 試しに、インターネットで検索してみると、ウィキペディアは勿論、様々なサイトなどに、このようなチャック・ノリスの「伝説」が書き込まれている。
 チャック・ノリス・ファクトとは、彼の「強さ」、「タフさ」、「完璧さ」、「絶対ぶり」などをジョークにした、ネット上の書き込みだ。ネットの特性もあり、書き込みの範囲はチャックの住んでいるアメリカのみならず世界各国に及び、その数は今でも増え続けている。
 否、そもそもチャック・ノリスって誰? という御仁のために、彼の経歴を紹介したい。
 いまや、ハリウッドを代表するアクションスターであり、実業家でもあるチャックは、1940年生まれ。高校卒業後、米国空軍に入隊。そこで武道に目覚め、空軍内で空手教室を開いた。退役後は空手道場を主宰するかたわら、空手世界チャンピオン(ミドル級)の座を6年にも亘って防衛しており、役者になる前はバリバリの格闘家だった。
 俳優チャック・ノリスが生まれるきっかけになった経緯を語る上で欠かせない人物が二人いる。まず一人目は、友人のブルース・リー。彼がハリウッドでアクションの振り付けを担当していたことが縁となり、チャックも同じ仕事をするようになる。そしてもう一人がチャックの弟子でもある、スティーブ・マックイーン。チャックはスティーブの助言もあり、本格的に俳優への道を志すことになった。
 ブルースやスティーブとの秘話や思い出の数々は、ファクトと共に本書を参照して頂くとして、下積み生活を経た後、チャックはアクション俳優として数々の映画に主演した。また、1993年から8年間放映されたCBSドラマ『炎のテキサス・レンジャー』は高視聴率を獲得、スターの地位を不動のものにしたのである。
 今や格闘家、俳優、映画製作者、実業家、コラムニスト、退役軍人として各種慈善活動やボランティア活動にも積極的に取り組み、英雄的な活躍で知られることも、チャック・ノリス・ファクトが生まれる下地になったのだろう。
 チャック・ノリス・ファクトがネット上に現れ始めた時期については諸説あるが、チャックがスクリーンに登場しなくなった2005年ごろと言われている。
 2012年に公開された映画『エクスペンダブルズ2』。シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスなどの共演が話題になったが、何よりも注目を集めたのは、7年ぶりのスクリーン復帰となったチャック・ノリスだった。――その登場シーン。
 たった一人で何人ものテロリストを撃ち殺し、戦車まで撃破。悠然と現れるチャックにスタローンが、
「そういえば、アンタがキングコブラに噛まれたって聞いたが……」
 チャックは小さく頷き、
「本当だ。丸5日、もがき苦しんだ後、コブラが死んだ」
 劇中でチャック・ノリス・ファクトを使ったのである。多くのファンが狂喜乱舞したに違いない。
 本書は、世界中から寄せられたファクトの中から、チャック本人が選んだ、101のベストファクトから成り、ネタに対し、チャックが「正直に話そう……」と解説を加えている。前述のキングコブラのファクトについても、意外な“真実”が明かされていて興味深い。
 本人公認の公式ファクトブックをぜひ、楽しんでもらいたいのだが、最後に、このファクトで締めよう。
「最後に笑う者が最もよく笑う。チャック・ノリスを笑う者は、その笑いが最後となる」

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