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特集「川と星―東日本大震災に遭って―」

彩瀬まる 初出 小説新潮2011年5月号

東北旅行中、あの大地震に遭遇。その時、わたしは津波に襲われた街にいた――

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撮影/田中和義

多くの作家も心揺さぶられる衝撃ルポ

唯川恵さん 報道では伝えきれない現実がこの中にある。言葉を失うばかりだ。

山本文緒さん 恐怖で雑誌を持つ手が震えました。彩瀬まるさん、勇気を持って書いて下さりありがとうございました。

角田光代さん この文章を書くのに、作者はどれほどの恐怖と不安と、罪悪感と絶望と、そしてかなしみと闘ったことだろう。それらに打ち勝ってきらめく星々を見せてくれた作者に、私は心から感謝する。

吉野万理子さん 非情な事実、一方で人の温かさ……さらに現実的な食べ物のこと、排泄のこと……伝わってきました。吉村昭さんの『三陸海岸大津波』が今読んでも新しいように、この作品も「3月11日」を未来に遺すと思います。

窪美澄さん 亡くなった方への思い、他人の優しさを素直に受け入れ、頭を下げる彼女の謙虚さ。それがあるからこそ書けた壮絶なルポルタージュ。この体験をたくさんの人に伝えるために、彼女は生きて、ここに戻って来た。

一キロ先の地面が、うごめいている。あの辺は、あんな色をしていただろうか。

地面、いや違う。あれは、木ぎれやものが浮いているから地面に見えるので

あって、あれは――。

私はこのとき確かに自分の死を思った。全身の血の気が引き、凍え、それな

のに頭は痛いくらいに冴えていた。死ねない、死ねない――

大げさと言われても構わない。

この瞬間、「ああ、情報は制御されてるんだ」と、私の中で思考が固まった。

がくがくと震える指で遺書のはじめの二行を綴り、私は携帯の画面を閉じた。

書けなかった。いやだった。どうしても、どうしても。

はたして私に書く資格があるのか