TOP > 特別インタビュー渡辺実氏 大都市を襲う巨大地震の恐るべき「災害の顔」とは

大都市を襲う巨大地震 そのとき現れる恐るべき「災害の顔」とは
防災・危機管理ジャーナリスト 渡辺実氏

  • 01
「高層難民」「帰宅難民」「避難所難民」
3・11で犯した「負の経験」
  • 02
火の海へ向かう帰宅難民
「帰宅支援ステーション」の不安
  • 03
「帰るな」「帰すな」の本当の意味
「日常の延長」を防災に

渡辺 実 1951年生まれ。工学院大学建築学科卒。防災・危機管理ジャーナリスト。(株)まちづくり計画研究所代表取締役所長。NPO法人日本災害情報サポートネットワーク理事長。技術士・防災士。各地での報道協力や災害調査、また防災計画策定に携わり、『大地震にそなえる 自分と大切な人を守る方法』(中経出版)など著書多数。監修作にコミック『彼女を守る51の方法』全5巻(新潮社)。NPO法人「立ち上がるぞ! 宮古市田老」(通称NPO田老)の設立に参画し、被災した宮古市田老地区の復興にも関わっている。

「高層難民」「帰宅難民」「避難所難民」

――最初に伺いたいのですが、東日本大震災以降、日本列島全体で高まっているとされる大きな地震の危険性についてどうお考えでしょうか。

渡辺 まず確認しなければならないのは、この地震で日本列島のバランスが大きく狂ったという事実です。これまで年間8センチ程度のスピードで西に動いていた日本列島をのせた北米プレートが、地震によって反対の東南方向へ最大50メートルも引っ張られました。そのせいで日本列島に生じたひずみを元に戻そうという動きが地殻の中で始まっており、3月11日以降、各地で地震が頻発しているわけです。
 3・11の地震では岩手県沖から宮城県沖・福島県沖の地殻が連動して動いた一方で、北海道の十勝・根室沖、房総沖の地殻は動きませんでした。その分、これらのエリアでは非常にストレスが溜まっていて危険な状態にあると言えます。内陸部に数多くある活断層もひずみを戻そうとしており、あちこちで地震が頻発する原因になっています。駿河湾沖から四国沖にかけて伸びる南海トラフも要注意です。政府の地震調査委員会は想定される地震の規模や発生確率について再評価の作業を行っており、発生確率が高まることが予想されます。
 要するに、3月11日以前と以降とでは、日本列島の置かれている環境がまったく変わったということです。日本は明らかに地震の活動期に入っている。言い尽くされている表現になってしまうのですけれど、いつどこで地震が起きてもおかしくない。このことをよりシビアに捉えなければいけません。痛ましい、気の毒だと思っていた被災地の状況は、もはや他人事ではないのです。

――とりわけ東京などの大都市を直撃する地震の可能性が懸念されています。

渡辺 1995年の阪神・淡路大震災は都会を襲った地震でした。政令指定都市・神戸が壊滅的な打撃を受けたのですが、その後17年近く、幸いなことに大都市は被災していません。東京然り、名古屋、大阪、福岡然りです。
 しかし、確率的に見て、都市が被災するであろう時期が早まっているのは間違いありません。首都直下地震も予断を許さない状況にあることが指摘されていますし、仮に南海トラフが動くようなことがあれば、大きな都市で言うと静岡市や浜松市、名古屋市から大阪市までが被災するでしょう。

3・11で犯した「負の経験」

――大都市で起きる地震と地方で起きる地震の違いはどこにありますか。

渡辺 大都市部で起きる地震は、地方で起きる地震とは被害の様相がまったく異なります。僕が使っている言葉で言うならば「災害の顔」が違ってくる。具体的には、阪神・淡路大震災から12年を経て出した新書、『高層難民』の中で提起した「高層難民」「帰宅難民」「避難所難民」という3つの「災害の顔」が集約的に現れるのです。
 高層住宅に住む人たちの生活が脅かされる。
 大勢の人々が帰宅できなくなる。
 避難所に人があふれる、つまり避難所が足りない。
これら3つの問題は、地方都市ではまず起きません。高層住宅はまれですし、通勤には主に車が使われ、野原、空き地のような避難場所になりうるスペースがたくさんあるからです。でも、大都市ではこの3つの「難民」が地震直後に必ず生じます。それを解決して初めて、大都市を襲う地震被害は「普通の災害」になるのだと思います。

――図らずも3・11の大地震では、首都圏で「高層難民」「帰宅難民」「避難所難民」が何百万人という規模で発生しました。

渡辺 確かに『高層難民』で書いたことが実証された形になったと思います。地震発生時刻が午後2時46分という、都心部における昼間人口が最も多い時間であったため、帰宅難民がとてつもない数で生じることになってしまったのです。
 3・11の大地震は“プレ・首都直下地震”と考えていいと思います。だからこそ教訓とすべきことがたくさんありました。
 まず帰宅難民が大発生し、大勢の人たちが歩いて家へと帰ったこと。
 これは都市住民にとって「負の経験」をしてしまった。私はそう考えています。
 なまじ「歩いて帰れてしまった」ことが大きな問題なのです。
 もし東京が直下型の大地震に見舞われた場合、帰宅することなど到底できません。政府の中央防災会議が公表している被害想定資料をご覧になれば一目瞭然です。23区の西側、いわゆる山の手方面を見てみますと、環状六号線=通称「山手通り」と環状七号線=通称「環七」との間に木造住宅が環のように密集しており、そこが出火延焼の危険エリアとされています。
 このエリアで起きた火災は、まさに都心と郊外との間に生じた火の海そのものと化します。
 また、23区の東側、いわゆる下町方面ですが、川に沿った地盤が軟弱な地域では家屋の倒壊が顕著に見られると予想されています。これもまた、都心と郊外との間に現れたバリアと化します。やはりこちらでも火災の懸念が拭えません。
 つまり都心の周縁部に火の海ができる、という最悪の事態が想定されます。
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