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書評・エッセイ

2018 Summer Special
My Favorite Shincho Bunko Best5

わたしの選んだ「新潮文庫」5冊

今年の夏も「新潮文庫の100冊」を全国展開中ですが、
しかし新潮文庫は100冊のみにアラズ。
むしろ100冊のうしろにスゴい隠し玉があるとも言え……。

科学する五冊

宮内悠介

●素数の音楽 マーカス・デュ・ソートイ著/冨永星訳
●暗号解読(上・下) サイモン・シン著/青木薫訳
●ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡 シルヴィア・ナサー著/塩川優訳
●100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影 春日真人
●四色問題 ロビン・ウィルソン著/茂木健一郎訳

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 科学ノンフィクションに"物語"を感じる人は多いはずだ。科学は歴然とそこにあり、人間の都合など慮ってはくれない。だからこそ、それをめぐる人々の発見や失意や妄執や成功が、切実な形で立ち上がってくる。人類が確かに知を継承していくなか、この世のなりたちが解き明かされていくさまは、一大叙事詩のようでもある。
 さらにいうならば、科学とは共有されうるものだ。だから科学ノンフィクションとは私たちに残された、そして今後もそうである"大きな物語"にほかならない。
 なかでも好きなのは、「どうせ読者にはわからぬだろう」といったごまかしを避け、それでいてちゃんと読むことができ、シンプルな知的興奮があるものだ。そうすると、第一に推したいのは『素数の音楽』(マーカス・デュ・ソートイ著、冨永星訳)だろうか。テーマは、いまだ超難問として数学者たちを阻むリーマン予想。抑えられた筆致からは、ポエジーさえ匂い立ってくる。
 ほかには『暗号解読』(サイモン・シン著、青木薫訳)、『ビューティフル・マインド』(シルヴィア・ナサー著、塩川優訳)、『100年の難問はなぜ解けたのか』(春日真人)などを挙げておきたい。最後に、番外編として『四色問題』(ロビン・ウィルソン著、茂木健一郎訳)を。有名な問題なのだけど、ごまかしがなさすぎて、幾度となく理解しようとする心を折られる。我こそはというかたは、ぜひチャレンジしてみてもらいたい。

 (みやうち・ゆうすけ 作家)

マーカス・デュ・ソートイ/冨永星訳/サイモン・シン/青木薫訳/シルヴィア・ナサー/塩川優訳/春日真人/ロビン・ウィルソン著/茂木健一郎『素数の音楽』/『暗号解読(上・下)』/『ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡』/『100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影』/『四色問題』978-4-10-218421-9/978-4-10-215975-9 978-4-10-215973-6/978-4-10-218441-7/978-4-10-135166-7/978-4-10-218461-5