書評

2012年8月号掲載

明治大帝の崩御からちょうど100年

――『明治天皇大喪儀写真 縮刷複製版』(監修・解説 橋爪紳也)

新潮社出版部

対象書籍名:『明治天皇大喪儀写真 縮刷複製版』
対象著者:監修・解説 橋爪紳也
対象書籍ISBN:978-4-10-332661-8

 一九一二年(明治四十五年)七月三十日、天皇崩御を宮内省が発表。大喪使(たいそうし)官制が公布され、大喪を司る臨時の官庁「大喪使」が設置されました。「明治天皇」という追号が決定したのは同年(大正元年)八月二十七日のことです。
 九月十三日、東京・青山練兵場で「葬場殿の儀」が行われました。霊柩は、翌十四日には鉄路で京都へ向かい、十五日に伏見桃山での「陵所の儀」において御陵に奉安されたのでした。
 その「葬場殿の儀」と「陵所の儀」の葬列(鹵簿(ろぼ))を記録した、いわば公式の写真集が存在します。それが、『明治天皇大喪儀寫眞』(大喪使 一九一二年十一月六日発行)です。

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「本牛及副牛ヲ附シタル轜車」


 写真集は、宮城正門の光景から始まり、大喪儀当日の宮城の御車寄、轜車(じしゃ)、そして前述の「葬場殿の儀」の鹵簿の写真へと続いています。葬場殿構内の全景や、尊骸を鉄道で京都へ運ぶため設けられた青山仮停車場、霊柩車の外観及び内部、東海道線を走る霊柩列車の写真等も、おさめられています。

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「霊柩列車安倍川鉄橋通過」


 京都の桃山仮停車場に列車が到着したのち、霊柩は、輿丁(よてい)「八瀬童子」が奉舁(ほうよ)する葱華輦(そうかれん)に遷座されて、祭場殿へと向かいました。そして、九月十五日に陵号が正式に命名された「伏見桃山陵(ふしみももやまのみささぎ)」に斂葬(れんそう)されたのでした。陵道を行く鹵簿の全貌のみならず、陵所内の光景、あるいは諸具の写真等も、『明治天皇大喪儀寫眞』には収録されています。

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「輿丁ノ奉舁シタル葱華輦」

写真は3点とも『明治天皇大喪儀写真』縮刷複製版より。
『明治天皇大喪儀写真』縮刷複製版(B5版横・上製・函入り・160頁)では、いずれの
写真ももっと大きく、概ね、左右の寸法が約19~20センチの大きさで掲載しています。


 明治天皇崩御からちょうど百年の節目を迎える本年夏、この『明治天皇大喪儀寫眞』の縮刷複製版を刊行することになりました(刊行にあたり書名を新字に改めています)。巻末に、この稀覯の写真集の原本を提供していただいた橋爪紳也さんによる解説を付し、その解説頁中には、原本の『明治天皇大喪儀寫眞』にはない、他の貴重な写真の数々も織り込んでいます。近代初の大喪儀の全容を、写真を通して目の当たりにしていただければと思います。

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